2013年12月2日月曜日

オオミドリシジミ


 小学校6年の時に買ってもらった旺文社の昆虫図鑑。
 標本写真が基本なのだが、生態写真も織り交ぜて編集してある。
 しばらくはバイブルであった(まだ手元にある)。
 この中で目を奪われたのがミドリシジミ類、ゼフィルスのところである。
 生態写真に写っている構造色の美しさはまるでモルフォのようで、いつも釘付けになっては家族中に「この蝶が見たいなぁ」と話していた。
 すると大学のサークルの山小屋から帰って来た兄が一言。
 「この間行っていた山小屋のところにいたよ。」
 「ホント?! 来年も行く?行くなら連れてって!」
 「いいよ。」
 もう来年の夏が楽しみでしょうがない。

 そして中学1年の夏休み、兄は約束通り山小屋に連れて行ってくれた。
 何泊したかは覚えていないが、終盤に差し掛かっていた頃の話である。
 余り行かない裏道を歩いていると、キラキラ光るものがスギだったかヒノキだったかの梢の上をチラチラ飛んでいる。
 「とまれ~、とまれ~」と心に念じていると梢の先にとまった!
 でも、まだゼフィルスかどうかはわからない。
 そおっと、そおっとじっくりと近づく。
 とにかく逃げられないように。
 でもできるだけ遠くから網を振らないと感づかれて逃げられるかもしれない、そう思いとにかく行けるところまで行く。
 そして心臓が飛び出しそうな心持ちでつなぎ竿を全部つなぐ。
 この時、竿なんかあまり見ずとまった蝶をずっと見ている。
 もしかしたら飛んでしまうかもしれない、見失ったら一巻の終わりだ、そんなふうに思いながら竿を手探りでつなぐ。
 そしていよいよ網を振った。
 「入った!」
 網が裏返しになったり、口が開かないようにそっと地面に下ろして中を確かめる。
 「やった!捕まえた!ミドリシジミだ!」
 感動で手が震えてなかなかうまく胸を押すことができない。
 蝶を捕まえて手が震えるなんて初めての経験だ。
 それでもなんとか胸を押し、蝶の動きを止めた。
 三角紙を持って来ていなかったので、山小屋に取りに戻り兄に報告する。
 兄は笑顔で「良かったな、来て良かったな。」と言ってくれた。

 二匹目のドジョウを、と言う気持ちではなかったが、さっきと同じように歩いていけばもう1匹採れるかも、と思いながら先ほどの道を行く。
 果たして2匹目がいた!
 これも同じようにとって嬉しく山小屋に戻った。

 さすがに3匹目はいなかったが、ものすごい満足感で満たされていた。
 とれた蝶はかなり鱗粉が取れていて、家に帰ってしばらくして「オオミドリシジミ」だと判明した。
 
 初めてゼフィルスをとった歳だった。

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